~山の光と沈黙~ 

4.目覚めの光

 夜の闇がゆっくりと引き、
東の空がわずかに白み始めたとき、
私は初めて、あの峰が “光をまとう瞬間” を見た。

カンチェンジュンガは、
ただ朝日を受けて輝くのではない。
光そのものが、峰の内部から滲み出てくるように見える。

最初の一筋の光が、
雪嶺の稜線に触れた瞬間、
山は静かに目を覚まし、
その白い肌が金色に染まり始めた。

私は息を呑んだ。
その光は、私の外側を照らすのではなく、
胸の奥の、まだ名もなき場所を照らしていた。

霧がゆっくりと流れ、
光がその霧を透かして降りてくると、
世界は一瞬、音を失った。

鳥の声も、川の流れも、
茶畑の葉を揺らす風さえも、
すべてがその光に耳を傾けているようだった。

私は思った。
「この光は、ただの太陽の光ではない。
世界の中心から灯る “目覚めの光” だ。」

その朝、私はまだ若く、
自分がどこへ向かうのかも知らなかった。
しかし、あの光を見たとき、
私の中で何かが静かに動き始めた。

山は言葉を持たない。
しかし、光は語る。

「歩め。
お前の道は、まだ始まったばかりだ。」

私はその声を、確かに聞いた。

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