― 公式記録から読み解く「スワミ・アベダーナンダはこう語った」から
1.死は終わりではなく変化
Death does not mean destruction, but it simply means the change. Our mental or thought form is equally subject to change like our physical body.
死は破壊を意味しない、単に変化を意味するにすぎない。
私たちの精神や思考の形態は、肉体と等しく変化の対象となる。
〔解 説〕
アベダーナンダは、死を存在の終りとは見ていない。肉体だけでなく、心や思考の働きも変化し続けるものであり、変化しない真の自己とは区別される。死は消滅ではなく、一つの状態から別の状態への変化・移行というべきものである。
2.真理を求め、最高の幸福へ
The worship of truth alone will reveal to us the highest ideals and that is the highest kind of happiness and blissfulness.
ひとり真理を崇拝することによってのみ、私たちに最高の理想が明かされる。そして、それが最上の幸福、至福である。
〔解 説〕
ここでいう「真理」とは、単なる事実や知識ではなく、永遠不変の実在(ブラフマン)を意味している。アベダーナンダによれば、感覚的な快楽や一時的な成功ではなく、真理の追求、実現こそが人間に最高の幸福をもたらす。
3.真の自己には形がない
The true self, although it may appear through different forms or different bodies, is itself formless.真の自己は、さまざまな形やさまざまな違った身体を通して現れることはあっても、それ自体には形がない。
〔解 説〕
私たちが「私」と呼んでいる身体や人格は、真の自己ではなく、その現れにすぎない。真の自己(アートマン)は、本来、形も大きさも持たず、さまざまな身体を通して顕現する。
したがって、肉体の死によって失われるのは外形なのであって、真の自己そのものではない。
アベダーナンダは、死の問題を身体の消滅の問題としてではなく、「形あるもの」と「形なき真の自己」とを識別する問題として捉え、「そもそも死ぬのはいったい誰なのか」というヴェーダーンタの死生観へと導いている。
『バガヴァッド・ギーター』第二章の、「魂は生まれず、死ぬこともない」
「人が古い衣を捨てて新しい衣を着るように、魂は古い身体を捨てて新しい身体を得る」
というクリシュナの教えと、まさに軌を一にしている。
4.あなたは「至福の子」
Know that you are the child of Bliss—’Amritasya putrah’. Feel it and be conscious of it. This is your ideal. Hold it and make it integral of your being.
あなたは至福の子(アムリターシャ・プトラハ)であることを知りなさい。 それを感じ、それを意識するのです。これがあなたの理想です。 それをしっかりと抱き、あなたという存在の不可欠な一部にしてください。
〔解説〕
「アムリターシャ・プトラ(Amritasya Putrah)」は、ウパニシャッドの有名な言葉で、「不死なる者の子らよ」「甘露の子らよ」と訳される。(特に『シュヴェータシュヴァタラ・ウパニシャッド』第2章5節など)
アベダーナンダは、人間を罪深い存在としてではなく、本来、至福と不死の本性をもつ存在として捉えている。霊性の理想とは、何か新しいものを獲得することではなく、本来の自己を思い出すことにある。
5.まず自分が何者であるかを知りなさい
You should first realise who you are and the rest will take care of itself.
あなたはまず自分が何者かを悟るべきであり、そうすれば残りのことは自ずとうまくいくであろう。
〔解説〕
人生のあらゆる問題の根本には、「自分を身体や心と同一視していること」がある。
真の自己を知ることができれば、悩み、恐れや執着に振り回されずに、人生の問題も自然と解決されていくというのである。
この言葉は、古代ギリシャの哲人ソクラテスの「汝自身を知れ」や、ラーマナ・マハルシの「私は誰か?」という問いにも通じる。
6.魂の本質は不死・不滅
The essence of our soul is immortal and that can never die.
私たちの魂の本質は不滅であり、それは決して死なない。
〔解説〕
肉体は生まれ、成長し、年老いて、やがて滅びる。心や感情も絶えず変化している。しかし、それらの根底に存在する本当の自分、すなわちアートマンの本質は不滅であり、生も死も超えている。
死とは、その不滅の自己に起こる出来事ではなく、変化する身体や心の領域に現れる現象にすぎない。
アベダーナンダにとって「死の問題」とは、死後の世界について推測することではなく、「死ぬもの」と「死なないもの」が何かを識別することである。
その答えは一貫している。
「あなたは心でも身体でもない。あなたは不死なる至福の子、神の子である。」
そのことを思い出すとき、死の謎は霧が晴れたように消えていく。


コメント