― 都市の青年が「聖域」で師に出会う
カリ・プラサード(のちのアベダーナンダ)は、ブラフマ・サマージの理性主義的な思想に触れながらも、心の奥に満たされない「渇き」を抱えていた。
1.ラーマクリシュナとの出会い
― その瞬間、人生が変わった
カリ・プラサードの渇きを癒したのは、ダクシネーシュワル寺院でのラーマクリシュナとの出会いである。この出会いは、彼の人生を決定的に変えた。
自伝『My Life-Story』(全集10巻 p.618〜)には、その最初の瞬間が次のように記されている。
ラムラール兄さん(ラーマクリシュナの甥)が「パラマハンサデーヴァ(ラーマクリシュナのこと)がお呼びだ」と告げた。
恐る恐る部屋に入り、師の御足に頭をつけて平伏した瞬間、身体の不調は消え、言葉にできない至福が全身を満たした。
師は優しく問いかけた。
「どこから来たのか。何を求めているのか。」
カリ・プラサードは震える声で答えた。
「ヨーガを学びたいのです。」
師はしばらく沈黙し、そして言った。「前世でお前は偉大なヨギであった。
今生は最後の生である。よろしい、明日からヨーガを教えよう。」
この言葉は、カリ・プラサードの魂に深く刻まれた。
青年カリ・プラサードが、聖域で「師ラーマクリシュナ」に出会う。その瞬間、彼の人生は新しい軌道に乗った。
2.ナレンドラ(のちのヴィヴェーカーナンダ)との出会い
― 暗闇から手を引いて連れ出した日(1884)
二人の最初の深い接触は、1884年、シムラ地区・ラムチャンドラ・ダッタ(在家信者)邸で起こった。
自伝『My Life-Story』(p.634〜)には、その劇的な場面が描かれている。
ラーマクリシュナが信者宅に招かれた際、師は突然こう言った。
「ナレンがいない。誰か迎えに行ってくれ。」
カリ・プラサードとニランジャン(後のニランジャーナナンダ)らは、ナレンドラの家へ向かった。
そこには―― 激しい頭痛に苦しみ、暗い部屋で横たわるナレンドラがいた。
「光を見ることすらできない。今日は行けない」と拒む彼に、カリ・プラサードたちは言った。
「目を閉じたままでいい。私たちが手を取って連れて行く。」
ついにナレンドラは立ち上がり、カリ・プラサードは彼の手を取り、
路地をゆっくりと歩いてラム・バブ邸へ連れて行った。
師の前に連れてこられたナレンドラを見て、ラーマクリシュナは胸をいっぱいにして喜んだ。
これが、二人の最初の「直接的で深い接触」である。
後にヴィヴェーカーナンダがアベダーナンダを欧米伝道の後継者に選ぶほどの信頼関係―― その原点が、この日の出来事だった。
3.北カルカッタという「場」が生んだ奇跡
― 霊的交差点としての都市空間
こうして1886年前後の北カルカッタには、20歳のカリ・プラサード、23歳のナレンドラ、58歳のラヒリ・マハサヤ(次回、登場する)という三つの異なる霊的位相が、同じ都市空間の中で呼吸していた。
アベダーナンダは当時、その“重なり”の意味をまだ知らなかった。しかし後になって彼は気づく。自分が歩いていた北カルカッタの路地は、霊的な交差点そのものだったのだ。
都市の喧騒の奥に潜む静寂。青年たちの思想的背景としてのブラフマ・サマージ。
そして、師との出会い、兄弟弟子との出会い。すべてが、アベダーナンダの人生を導くために静かに配置されていたかのようである。

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