第1回 前書き

1.聖者の暮らした街
 昨日をもって、第二部「ガンジス河の漣」はひとつの区切りを迎えました。スワミ・アベダーナンダ編著『ラーマクリシュナの言葉』寓話編より、全52話のうち20話を和訳し、あわせて簡単な解説をご紹介してまいりました。

そして本日から始まる第三部では、「コルカタの夢(Dream of Kolkata / The Sacred Crossroad of Calcutta)」をコンセプトに、数多の聖者たちが暮らした聖なる街――コルカタ(旧カルカッタ)を舞台に繰り広げられた物語を、これから次のような流れで辿ってまいります。

地理・歴史的背景
フーグリー川とデルタ地帯の地形、そして英国領インド帝国の首都として形成されていった帝都カルカッタの誕生。
繁栄を極めた植民地都市としての姿と、同時に精神的中心地でもあったという、もう一つの顔を見つめます。

聖なる場所
ダクシネーシュワル・カーリー寺院、そしてフーグリー川(ガンジス川の支流)のガート(階段状の岸辺)がたたえる独特の雰囲気。
聖者たちの息づかいが今もなお感じられる場所を訪ねます。

聖者たちの足跡
その街の雑踏の中で、聖者たちがどのように呼吸し、生きていたのか。
近代都市の喧騒のただ中に、なお静寂の核が存在していたラーマクリシュナの時代。北カルカッタという都市空間、そこに共有されていた精神的背景、アベダーナンダとラーマクリシュナやヴィヴェーカーナンダとの出会い、さらにM・グプタという静かな結節点を通して、都市の奥に潜んでいた「もう一つの静寂」に触れていきます。

2.アベダーナンダの生涯と教え
アベダーナンダの生涯の詳細については、現在準備中の書物、前編『巨星 アベダーナンダの生涯』(仮題)に譲ることとし、ここでは彼が設立したラーマクリシュナ・ヴェーダーンタ・マト(僧院)の公式記録に記されている「生涯と教え」を中心にご紹介していく予定です。

また、この「コルカタの夢」という舞台では、アベダーナンダのインド遍歴や、聖地を訪ねる巡礼の旅についても取り上げてまいります。

十九世紀末のカルカッタは、単なる一都市ではありませんでした。
偉大なるマスターたちが集い、それぞれの道を歩みながらも互いに響き合っていた“聖者の街”――。
その熱気と静寂に思いを馳せつつ、明日からは、舞台となるコルカタの街の紹介から始めてまいりましょう。

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