第20回 次の大舞台・欧米へ

第三部を振り返ると、「コルカタの夢(Dream of Kolkata / The Sacred Crossroad of Calcutta)」をコンセプトに、数多の聖者たちが暮らした聖なる街――コルカタ(旧カルカッタ)を舞台に繰り広げられた物語を、地理・歴史的背景、聖なる場所、聖者たちの足跡という流れで辿り、スワミ・アベダーナンダがその魂を育んだ北カルカッタという「精神の土壌」に焦点を当ててきました。
また、第9回からは、彼が設立したラーマクリシュナ・ヴェーダーンタ・マト(僧院)の公式記録をベースに、彼の生涯(The Life Of Swami Abhedananda)のうち、西洋に渡る前までを概観しました。
さらに、第12回からは、壮大な航海へ漕ぎ出す前に、まずはヒマラヤの洞窟と厳しい修行の中で培われた、「アベダーナンダの教え」の核心に触れてみるために。同じ公式記録をもとに、「アベダーナンダはこう語った(Thus Spake Swami Abhedananda)」の内容を紹介してきました。 

次の舞台は、いよいよ
1896年、尊敬する兄弟弟子スワミ・ヴィヴェーカーナンダからの1通の書簡により、インドの大地から、世界の中心となっていた欧米の大舞台へ、グローバルな旅へと展開していきます。

コルカタの夢の果てに ― ロンドンからの手紙
北カルカッタの僧院の一室。
夕暮れの光がフーグリー川の水面を淡く照らし、その反射が静かに壁を揺らしていました。
そのとき、一通の手紙が届いた。封筒には、遠い異国の名――London。

兄弟弟子、スワミ・ヴィヴェーカーナンダからである。

“In 1896 came the call from Swami Vivekananda to assist him in his work of preaching Vedanta in England.”
1896年、イギリスでのヴェーダーンタ伝道を手伝ってほしいという要請であった。

その文面を読み終えたとき、アベダーナンダの胸に、静かで深い波が広がった。
それは、師ラーマクリシュナの声が時空を越えて響くような感覚だった。

彼は窓の外を見た。
フーグリー川の流れは、ベンガル湾へ注ぎ、インド洋へ、その先には、まだ見ぬ大西洋が広がっている。

彼はのちに、この大航海の記憶を振り返り、自身の「日記の抜粋(Leaves from My Diary)」(全集10巻p11)の中で、アメリカ、ニューヨークでの心境を次のように記しています。

「偉大なる師の御意志によって、私たちは一万二千マイルを旅し、多くの海と大西洋を越えてニューヨークにたどり着いたのだと感じた。」

そして続けて、こう書き残しています。

「私は、古代の仏教僧がユーラシアを横断して仏陀の教えを説いたように、キリスト教を信じる人々にラーマクリシュナの福音を説く使命を感じた。
さらには、世界中を旅してキリストの福音を説く現代の宣教師の冒険心を自分の内に感じた。」 

その言葉には、自分の旅が「世界宗教史の大河」の中にあるという深い自覚が宿っていました。
この時抱いた壮大な使命感の通り、彼はのちに25年もの長きにわたり、欧米の地でヴェーダーンタの光を灯し続けることになるのです。

カルカッタの路地で育まれた魂は、いま、世界へ向けて歩み出そうとしている。
その第一歩として――。

He sailed for London in August 1896.
彼は1896年8月、まずは盟友の待つロンドンに向けて出航した。

こうして、第三部「コルカタの夢」は幕を閉じます。
しかし、それは終わりではなく、むしろ、東の聖地で育った魂が、世界の光へと向かう旅がここから始まるのです。

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