― 公式記録から読み解く「スワミ・アベダーナンダはこう語った」から
1.宇宙的な心とつながる心
The mind stuff is finer matter in vibration.
The mind can be said to be the invisible side of matter and matter is the visible side of mind.
The human minds are like the eddies in that one eternal current of the cosmic mind.
心を構成しているのは、振動するより微細な物質である。
心は物質の目に見えない側面ということができ、物質は心の目に見える側面である。
人間の心は、宇宙的な心という一つの永遠の流れの中で生じる「渦」のようなものである。
〔解 説〕
心と物質の二面性を示す喩え、心は物質の不可視の側面で、物質は可視的な側面をいう。
アベダーナンダによれば、個々の心は孤立した存在ではなく、宇宙的な心(コズミック・マインド)という大きな意識の流れの中に現れた一時的な渦である。
個人の心は独立した存在ではなく、宇宙的な心の一部として、個人の精神が宇宙精神とつながっているとするヴェーダーンタの思想を表現したものである。
2.思考はやがて現実のものとなる
The power of thought is tremendous.
What we think, we become after a while.
The idealistic thoughts are consequently transformed into realities.
What we call genius is in reality immense power of concentration.
思考の力はすさまじいものである。
私たちが考えているものに、私たちはしばらくするとそのようになっていく。
理想的な思いは、その結果として現実のものへと姿を変えていく。
私たちが天才と呼ぶものは、実のところ、計り知れないほどの巨大な「集中力」にほかならない。
〔解 説〕
この言葉は、「人生は心一つの置きどころ」「思考は現実化する」「積極的観念を持て」
などという教えを思い起こさせる。
アベダーナンダは、人間の未来を決定するものは環境ではなく、心の方向であると説く。天才とは、生まれつきの特殊な能力ではなく、一点に集中された心の力である、と。
3.集中力は宇宙最大の力
Nothing can be achieved without concentration.
There is no power in the universe higher than the power which comes through concentration.
The power acquired by its practice can control all the physical forces of nature.
何事も集中なしには、成し遂げることはできない。
集中を通して得られる力以上に、高度な力というものは宇宙にはない。
集中という実践によって得られた力は、自然界のあらゆる物理的な力を制御することができる。
〔解 説〕心とその力
今回のテーマ、「心とその力」では、ヴェーダーンタの観点から、4つの重要なポイントがあります。
1.心は「微細な物質(Subtle Matter)」
ヴェーダーンタでは、心と身体、あるいは精神と物質は別物ではなく、同じ物質で、密度のグラデーションに過ぎないとしています。
・ 粗大な物質(Gross Matter):目に見える肉体や物
・ 微細な物質(Subtle Matter):目に見えない心(マナスやブッディ)
「心を構成しているのは、振動するより微細な物質である」という一節は、このヴェーダーンタの物質観をダイレクトに表現したものです。
2.宇宙的な心(Cosmic Mind)と個人の心
ヴェーダーンタ(特に不二一元のアドヴァイタ・ヴェーダーンタ)では、宇宙の根本は一つ、すべては繋がっていると考えます。
「人間の心は宇宙的な心という一つの永遠の流れの中で生じる渦」という喩えは、宇宙という巨大な海(Cosmic Mind)の中で、人間の個人の心(Human minds)は、その海に一時的に存在する「漣・さざ波」や「渦」に過ぎず、本質は一つであると説きます。
3.思考と集中
ヴェーダーンタやヨーガの哲学において、心の本質は「純粋な意識(アートマン)」です。人間の思考はエネルギー(プラーナ)によって動く波(ヴリッティ)とされます。
散漫になりがちな思考の波を一つに集めること(集中)により、人間は本来備わっている内なる無限の力を発揮し、自然界のコントロールさえ可能になるとされています。
「何事も集中なしには、成し遂げることはできない」として表現されているのは、ラージャ・ヨーガ(王道の、瞑想のヨーガ)の核心部分です。
アベダーナンダは、精神の集中こそが人間に備わる最大の力であると説きました。
心が散漫であるとき、力は分散する。しかし一点に集中された心は、驚くべき力を発揮する。「ダーラナ(集中)」から「ディヤーナ(静慮、瞑想)」の修練も、この心の集中統一を目指すものです。
4.心と思考の違い
心と思考、この2つは別のものではなく、同じものの「状態」の違いです。
ヨーガやヴェーダーンタの瞑想では、「思考(波)を完全に静めると、心の本質(澄んだ水の底)が見えてくる」と喩えています。
心(マナス)は、思考が生まれる場所、スクリーンで、思考(ヴリッティ)は、心という土台の上に、一瞬一瞬生まれては消える「心の動き(活動)」を指しています。
静かな湖の表面に、風(刺激)が吹いて「波」が立つように、心という素材が形を変えたものが「思考」です。
心が変化する前の「素材」や「空間」(静かな水)で、思考は心がエネルギーによって動かされている「状態」(揺れる波)
だからこそ、英文の後半で「集中(Concentration)」によって思考の波を一つにまとめることが、凄まじい力を生むと強調されているのです。
アベダーナンダは、難解なインド哲学を当時の西洋人にも分かりやすい科学的な言葉(vibration, matter, concentration)を使って説き明かしました。
人は考えたものになっていく。
心の描く思考、理想は現実のものとなる。
集中力こそ宇宙最大の力である。
スワミ・アベダーナンダの、ヴェーダーンタ思想の中心には、「心は宇宙心の流れの一部であり、人間の内には無限の力が宿っている」という確信がありました。


コメント